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長崎県の事例紹介

自治体と医療機関が連携して保健師向けの研修会や個別説明会を開催
適切な情報提供・連携体制を構築

出生前検査に関する情報提供の課題

長崎県こども家庭課では令和5(2023)年度から、市町における情報提供支援の取組を進めています。 2022年に運用開始された「NIPT 等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針(以下、「指針」と表記)」を受け、基幹施設とこども家庭課において、本取組の必要性について協議を行い、令和5年度より取り組むこととなりました。

市町に対し、国からの通知や認証の指針について適宜情報提供していたものの、実際には母子手帳交付時、NIPTに関する情報提供はほぼ行われていない状況でした。そこで、まずは市町の母子保健担当者に窓口での情報提供の必要性を理解してもらうこと、NIPTに対する基本的な知識を得てもらうことが必要であると考え研修から始めることにしました。

母子手帳交付時に適切な説明をするために
保健師等を対象にした研修会を開催

長崎県が実施する妊婦さんへの出生前検査に関する情報提供の取組 で重要な役割を果たしているのが、長崎県こども家庭課が主催する「妊娠出産包括支援研修会」です。この研修会は子育て世代包括支援センターの職員を対象に開催しているもので、令和5年度はNIPTをテーマに2回の研修会を実施しました。

本会では、母子手帳交付窓口で妊婦さんへの説明を担う保健師が、NIPTについて検査や支援の体制について知識を得ることで、適切な情報提供を行うための基盤を築いてもらうことを目的としています。また、必要に応じて産婦人科医療機関や認証医療機関等に繋ぐ道筋を示すことで、窓口では対応が難しいのではないかと考える保健師の不安を払拭することも意図しています。

研修会では、医師や出生前コンサルト小児科医、遺伝カウンセラーなど、様々な立場でNIPTに関わる登壇者が、NIPTに関する知識や受診の流れ、相談体制などについて講演を行っています。


<研修会プログラム例>

目的:
NIPTを取り巻く社会情勢を理解し、自治体で情報提供を行う必要性を理解。
出生前検査の基本的な知識を得る

講義①「出生前検査をめぐる社会情勢と求められる相談体制について」
講義②「出生前検査の基本的知識と長崎県の状況」
講義③「妊婦の適切な出生前検査へのアクセスのために~自治体との連携を目指してから」

目的:
NIPTに関わる機関の役割を理解し連携につなげる

講義① 連携施設の役割と対応の現状
講話② 出生前コンサルト小児科医の役割と相談対応の実際
講話③ 遺伝カウンセラーの役割と相談対応の実際


研修会を通じ、保健師からは「正しい情報提供を母子保健窓口が行うことの必要性が分かった」「出生前検査についてあまり知らなかったので、とても勉強になった」などの声が多く寄せられていましたが、「誘導にならない形での情報提供を具体的にどうすればよいか」といったコメントもあり、今後の課題として捉えています。

自治体と医療機関等の連携も推進

県内でも県北地域では、研修会や地域の医療機関が実施する個別説明会を通じて自治体と医療機関が関わりを深め、“顔が見える関係”ができたことで、自治体と医療機関等の連携のさらなる強化にも繋がっています。今後の情報交換もスムーズになり、検査を検討する妊婦さんに対して、母子手帳交付窓口から産婦人科医療機関や認証医療機関に繋げる際にも相談しやすい連携体制が構築されつつあります。

2回の研修会後、定期的に実施されているNIPTの基幹施設と連携施設の連携会議において共有がなされ、各エリアごとにある連携施設が近隣自治体の窓口担当者からの相談を受ける体制をとることについて共通認識が図られました。

この体制が実効性のあるものとなるには、やはり“顔が見える関係”が重要です。今後、長崎県こども家庭課では、県北地域をモデルとして、他の地区においても地域の母子保健窓口と各地区にある認証施設との連携体制を強化するための支援が必要と考えています。