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疾患について

これから生まれてくる、あるいは生まれてきたお子さんに、生まれつきの病気や障害があるとわかると、ショックを受けるお父さん、お母さんもいらっしゃるでしょう。しかし、病気や障害があったとしても、お子さんの誕生は喜ばしいことです。

一方で、「この先、どうなっていくのだろう」、「自分に育てられるのか」といった不安もあるかもしれません。しかし、その不安はお子さんの病気や障害、成育について「よく知らない、わからない」ことからくるかもしれません。

まずは、正しい知識を持つことが大切です。生まれつきの病気や障害があるからといってお子さんが何もわからなかったり、何もできない状態ではないことを知っておいていただきたいと思います。

生まれつきの病気について

赤ちゃんの3~5%は、何らかの先天性疾患(生まれつきの病気)を持って生まれます。そのうちの25%が染色体の変化による染色体疾患です。NIPTの対象である 3つの染色体疾患(13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー)と、その合併症として頻度の高い先天性心疾患について解説します。

13トリソミー(パトウ症候群 )

13番染色体が通常よりも1本多くなっていることから起こります。脳や心臓などの病気がある場合も多く、症状の程度によって出生後の早い時期に亡くなることがあります。そのため、1歳まで生きられるお子さんは10%未満とされてきましたが、近年では新生児集中治療や外科手術などにより寿命が延びていると報告されています 1)

からだの特徴 呼吸の不安定さ、栄養摂取の課題
起こりやすい症状 先天性⼼疾患、脳の形態(全前脳胞症)、⼝唇⼝蓋裂、けいれん など
生活面 成⻑発達はごくゆっくりであることが特徴です。
多くのお⼦さんは、呼吸や栄養⾯で医療的ケアなどのサポートを得ながら、⽣活を送ります。
発達の過程で、サイン⾔語の習得や表情でのコミュニケーションを図ることができます。
13トリソミーについて|小児慢性特定疾病情報センター

18トリソミー(エドワーズ症候群)

18番染色体が通常よりも1本多くなっていることから起こります。心臓や呼吸器、脳などの病気がある場合も多く、成長するなかで小児がんを発症することもあるという報告もあります 2)。生まれた後の環境に順応することが難しく、長く生きられないお子さんがいる一方で、新生児集中治療や心臓手術、食道閉鎖手術などにより寿命が延びてきています 3)

からだの特徴 体つきが⼩さい(胎児期より)
呼吸の不安定さ、栄養摂取の課題
起こりやすい症状 先天性⼼疾患、脳の形態(⼩脳低形成)、消化管疾患(⾷道閉鎖、鎖肛)、関節拘縮、腹部腫瘍 など
生活面 成⻑発達はごくゆっくりであることが特徴です。
多くのお⼦さんは、呼吸や栄養⾯で医療的ケアなどのサポートを得ながら、⽣活を送ります。
発達の過程で、サイン⾔語の習得や表情でのコミュニケーションを図ることができます。
18トリソミーについて|小児慢性特定疾病情報センター

21トリソミー(ダウン症候群)

21番染色体が通常よりも1本多くなっていることから起こります。生まれつき心臓などの病気がある場合も多いのですが、医学の進歩により、現在では21トリソミー(ダウン症候群)の方の平均寿命は約60歳ともいわれています 4)。成長のなかで、起こりやすい症状については定期的な健康管理が大切です。最初に症状について報告したダウン医師の名前が由来となり、ダウン症候群と呼ばれています。

からだの特徴 ゆっくり成⻑
やわらかい体つき
起こりやすい症状 先天性⼼疾患、消化管疾患、甲状腺疾患、先天性難聴、中⽿炎、眼疾患(近視・遠視、⽩内障) など
生活面 運動発達は、療育⽀援を受けながら時間をかけ習得します。
表現⼒は豊かな⽅が多く、⾔語やサインを⽤いてコミュニケーションを図ることができます。
多くの方は様々なサポートを活用して通学や就労をしています。
21トリソミーについて|小児慢性特定疾病情報センター

先天性心疾患 (心臓の病気)

13トリソミー、18トリソミー、21トリソミー(ダウン症候群)の合併症の中で、比較的頻度が高いのが心臓の病気です。心臓の病気というと心配になるかもしれませんが、近年では手術技術の進歩によって赤ちゃんへの難しい心臓手術が可能になり、特に21トリソミー(ダウン症候群)に合併する先天性心疾患の大部分は治療できるようになりました。13トリソミー、18トリソミーに関しても、ご家族とよく話し合ったうえで手術を行うお子さんも増えてきました。

心臓の病気にも心室中隔欠損、動脈管開存、心房中隔欠損など さまざまな種類があり、生まれてすぐに心臓手術をすることもあれば、成長を待ってから手術をすることもあります。

成長・発達について

染色体疾患のあるお子さんには運動面や知能面の発達に遅れがみられることがありますが、多くのお子さんは成長と共にゆっくりと発達していきます。子どもの成長・発達に個人差があるのは、障害があってもなくても同じです。病気の種類や障害の程度にもよりますが、必要な医療やケア、支援を受けながら学校に通い、大人になって働いたり、趣味を楽しんだりと自分らしく充実した毎日を送っている方もたくさんおられます。また、笑ったり泣いたりとご家族に自分の気持ちを伝えたり、きょうだいと共に楽しく遊んだりしています。

日本ダウン症協会、18トリソミーの会では、それぞれ専用の母子手帳を作成 ・配布しています。成長が比較的ゆっくりなお子さんに合わせて作成された成長曲線や医療・子育て情報が掲載されており、成長の過程がイメージしやすいと思います 。また、13トリソミーに関しては、米国のサポートグループSOFT(Support Organization for Trisomy 18, 13, and Trisomy Related Disorders)が、成長曲線を作成しウェブサイトで公開しています。


出典:

1) 片岡功一:Ped Cardiol Card Surg 2020; 36: 3‒15
2) Satgé D et al.:A tumor profile in Edwards syndrome (trisomy 18). Am J Med Genet C Semin Med Genet 2016 172(3):296-306.
3) Kosho T et al.:Natural History and Parental Experience of Children With Trisomy 18 Based on a Questionnaire Given to a Japanese Trisomy 18 Parental Support Group. Am J Med Genet 2013 Part A 161A:1531–1542.
4) Amy Y. Tsou et al.:JAMA, 2020;324(15):1543-1556