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検査前後の支援

出生前検査に関しては、医療機関をはじめ、市区町村の母子保健担当窓口、当事者団体などで、妊娠の時期に応じた情報提供や相談対応などの支援が行われています。支援体制の状況は施設や地域によって異なりますが、ここでは、現時点で受けることができる支援についてご紹介します。

図:出生前検査前後に受けられる支援

出生前検査前後に受けられる支援

医療機関での相談対応や遺伝カウンセリング

出生前検査に関する相談をしたいときは、まずはかかりつけの医療機関に相談しましょう。かかりつけの医療機関で出生前検査に関する支援が受けられない場合には、日本医学会が認証しているNIPTの認証施設で相談することもできます。NIPTの認証施設には、出生前検査に詳しい医師(臨床遺伝専門医)や認定遺伝カウンセラー®、遺伝看護専門看護師などの専門家がおり、遺伝カウンセリングを行っています。

遺伝カウンセリングとは、赤ちゃんの検査や生まれつきの病気に関する妊娠・出産への不安などについて相談できるもので、「遺伝」とはついていますが、21トリソミー(ダウン症候群)のように多くは遺伝しない病気についても相談することができます。NIPTを受けると決めていない方、NIPTの認証施設で出産しない方でも遺伝カウンセリングを受けることができます。費用は医療機関によって異なります。


臨床遺伝専門医

遺伝医療に関し豊富な経験と知識がある医師です。日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会から認定されています。

認定遺伝カウンセラー®

病気や遺伝に関する正しい知識を伝え、当事者のさまざまな相談に応じ、意思決定や心理社会的側面の支援を行う専門職です。日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会から認定されています。

遺伝看護専門看護師

遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定やQOL向上を目指した生涯にわたる療養生活支援を行う看護師です。日本看護協会から認定されています。

医療機関での結果説明や遺伝カウンセリング

出生前検査の結果については、検査を受けた医療機関での遺伝カウンセリングのなかで説明が行われます。

結果「異常なし」の場合

確定的検査を受けた結果、異常がみつからなかった場合には、通常の妊婦健診のなかでその後の赤ちゃんの成長を継続して見守ることになります。

超音波検査などで特徴が確認されている場合には、今後の妊娠経過や出生後において想定されることについて、話し合います。

結果「異常あり」の場合

確定的検査を受けた結果、特定の染色体の特徴が確認された場合には、十分な時間をかけて説明が行われます。染色体の病気があると、どのような症状があるのか、今わかること、わからないことも含めてどう捉えたらよいのか、医療者と話し合う場を持ちます。染色体の病気について詳しい説明を希望する場合には、出生前コンサルト小児科医への紹介を受け、染色体の病気があるお子さんや成人になった方の診察経験のある小児科医から説明を受けることも選択できます。このような継続した関わりのなかで、最善の選択が何なのか、情報の整理や心理的な支援が行われます。

また、検査後の遺伝カウンセリングでは、染色体の変化がなぜ起きたのか、遺伝によるものなのかどうか、情報の整理が行われることもあります。もし遺伝による可能性がある場合には、追加の検査の提案や、きょうだいや次の子への影響についても根拠に基づいた説明が受けられます。子どもの染色体の病気はどのカップルの間でも偶発的に起こることが多く、親の染色体に特徴があることは少ないことが知られています。

意思決定支援のツール

妊婦さんとそのご家族は、妊娠・出産にあたり、さまざまな意思決定(出生前検査を受ける・受けない、妊娠の継続について、出産方法について…など)が必要になることがあります。
また、妊婦さんご本人だけではなく、ご家族を始めとする周囲の方々との相談も必要になり、「なにがよい決定なのか」「だれにとってよい決定なのか」など迷われたり難しく感じることも多いでしょう。
本コンテンツでは、意思決定に必要となる情報を整理し、自分が大切にしているものについて確認し、納得のいく選択をガイドする「オタワ個人意思決定ガイド」の活用の仕方をご紹介します。


意思決定支援のツールについて

「オタワ個人意思決定ガイド」は、難しい決断を迫られている人のためのガイドです。意思決定に関わる人たちに自分の考えを伝える際の手助けをします。意思決定に迷われている方は、ぜひ一度お試しください。

ピアサポート

出生前検査の結果が出て、出産後の暮らしや心配ごとなどについての情報入手や相談をしたい場合は、ピアサポートといって、当事者団体や親の会など同じような立場にある人が情報提供などの支援を行っている団体の相談窓口を利用するという方法があります。団体によっては、電話やオンラインで相談することもできます。

支援を行っている団体の相談窓口について|出生前検査認証制度等運営委員会ウェブサイト

行政のサポート

都道府県・指定都市・中核市では、NIPTなど出生前検査を受けた方への相談支援を行っている地域もあります。


また、市区町村では、産前・産後をサポートする事業や産後をケアする事業を行っています。保健師や助産師などが、支援が必要な妊産婦さんの相談を受けたり、乳房ケアを含む産後の心身のケアをしたりするもので、妊産婦さんの自宅や保健センターなどの施設で行われます。妊娠中絶した場合でもサポートを受けられることもあります。市区町村によって事業の内容や利用料金は異なりますので、母子健康手帳と一緒に配布された資料や市区町村のウェブサイトを確認するか、役所の担当部署に問い合わせてみるとよいでしょう。

経済的サポート

公的医療保険による出産育児一時金と出産手当金は、妊娠4ヶ月以後の出産、流産、死産(人工妊娠中絶を含む)のいずれの場合にも支給されます。出産育児一時金は、出産時の入院費や分娩費として支給される一時金です。出産手当金は、出産のために仕事を休み、その間の給与が受けられなかった場合に支給される手当金です。これらの制度について、詳しくはご自身が加入している健康保険の窓口にお問い合わせください。

また、2023年1月より、妊娠・出産時にそれぞれ5万円相当が市区町村から給付される「出産・子育て応援交付金」が始まっています。各世帯にクーポンを支給し、そのクーポンと引き換えに指定の育児用品や子育て支援サービスを提供するものです。地域によっては、現金支給としている場合もあります。2022年4月以降に妊娠届・出産届を提出した世帯が対象となります。詳しくはお住まいの地域の市区役所・町村役場にご確認ください。

職場でのサポート

労働基準法により、一定の産前産後の休暇を取ることができます。産前休業の取得は個人の自由ですが、産後休業は取得しなければならないものです。仕事の調整が必要な場合は事前に相談するようにしましょう。妊娠4ヶ月以後の出産、流産、死産(人工妊娠中絶を含む)のいずれの場合にも、8週間の産後休業が取得できます。取得については、職場の担当窓口にお問い合わせください。

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