妊娠中や、産前産後には、自治体や職場などからさまざまな支援が受けられます。支援制度により、経済的な負担を減らすこともできます。それぞれ申請や手続きに関する詳細を確認しておくようにしましょう。
自治体のサポート
妊婦さんは、お住まいの地域の自治体から、様々な支援を受けられます。
母子健康手帳
妊婦さんと赤ちゃんの健康状態を記録していく大切な手帳です。妊婦健診や乳幼児健診などの各種健診、訪問指導・保健指導などの母子保健サービスを受けた際の内容や、ワクチンの接種状況について、情報を記録できます。記入された情報は、かかりつけ医はもちろん、それ以外の医師による診療や保健師による保健指導の際にも役立てられます。お子さんが大人になってから必要になる場合もありますので、きちんと記録して、大切に保管しましょう。
母子健康手帳は、お住まいの地域の保健センター・市区役所・町村役場などに「妊娠届出書」を提出することで受け取れます。
妊婦健診の受診券・補助券
妊婦健診の公費助成が受けられます。妊婦健診を受診する際には、母子健康手帳と一緒にもらう妊婦健診のための受診票を産科医療機関に渡してください。妊娠初期など、受診票を利用できるタイミングが限られている場合もあるため、できるだけ早い時期に母子健康手帳を受け取り、サポート情報を把握しておきましょう。お住まいの市区町村によって受けられる補助の対象となる検査項目や補助される金額は多少異なります。
職場のサポート
妊産婦さんの働き方への配慮は「男女雇用機会均等法」「労働基準法」で保障されています。
会社に規定がない場合やパートタイム労働者の方も会社に申し出ることができます。
また、出産後、仕事と育児を両立し、継続して仕事ができるよう「育児・介護休業法」の両立支援制度があります。
母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)
妊娠中は、ご自身の体調を考えて働き方を見直すことが重要です。体調や仕事の内容で不安を感じることがあれば、かかりつけ医などに相談しましょう。働く妊婦さんが医師などから通勤緩和や休憩などの指導を受けた場合、その指導内容を事業主に的確に伝えるために、母健連絡カードを利用できます。妊婦さんから母健連絡カードが提出された事業主は、記載内容に応じた適切な措置を講じる必要があります。
例えば、つわりや貧血、血圧の上昇などの症状に対しては、休憩の確保、勤務時間短縮、休業などの選択肢を取ることが考えられます。
なお、母健連絡カードは、出産後(妊娠週数にかかわらず、流産・死産[人工妊娠中絶を含む]を含みます。)1年以内の産婦さんも利用いただけます。
図:母健連絡カードの使用方法(イメージ)
通院休暇
仕事をしている妊婦さんが妊婦健診などを受ける場合、勤務時間中に通院休暇を取得することができます。ただし、通院休暇が有給休暇かどうかについては、事業所によって対応が異なります。
産前産後休業
産前休業は、分娩予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から請求すれば取得できます。出産当日は産前休業に含まれます。分娩予定日とは妊娠40週0日にあたる日付であり、予定帝王切開などで出産を予定している日付とは異なります。なお、出産当日は産前休業に含まれます。
産後休業は、出産日の翌日から8週間とされています。ただし、産後6週間を経過後に本人が請求した場合、医師が支障がないと認めた業務には就業できます。産後休業は、妊娠4か月(妊娠12週)以上での流産・死産(人工妊娠中絶)を経験された方についても対象となります。
育児休業
1歳に満たない子を養育する労働者は、男女問わず希望する期間子を養育するために休業することができます。育児休業は1人の子に対して原則2回に分割して取得できます。また、産後パパ育休と育児休業を合わせれば4回休業できます。子が1歳以降、保育所に入れないなどの事情がある場合には、子が1歳6か月に達するまでの間(子が1歳6か月以降、保育所に入れないなどの事情がある場合には、子が2歳に達するまでの間)育児休業を延長することができます。
そのほか、3歳に満たない子を養育する労働者は、短時間勤務や所定外労働の制限を請求できます。子が小学校入学前の場合、看護や予防接種、健康診断のための子の看護休暇の取得、時間外労働の制限、深夜業の制限を請求できます。
産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)
男女とも仕事と育児を両立できるように、産後パパ育休制度(出生時育児休業制度)が創設されました。育児休業とは別に、原則として出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して休業することができます。
図:育休取得イメージ
経済的サポート
出産・子育て応援交付金
妊娠届出時や出生後の面談による相談支援と、それぞれ5万円相当の出産・子育て応援ギフトを支給する「出産・子育て応援交付金事業」が、各市町村において順次始まっています。出産・子育て応援ギフトは、各世帯にクーポンを支給し、そのクーポンと引き換えに指定の育児用品や子育て支援サービスを提供するものです。地域によっては、現金支給としている場合もあります。2022年4月以降に出産した世帯が対象となります。詳しくはお住まいの地域の市区役所・町村役場にご確認ください。
出産育児一時金
公的医療保険に加入している場合、出産時に1児につき50万円(産科医療補償制度の対象分娩とならない場合は48.8万円)が支給されます。産科医療機関によっては、医療機関が妊婦さんに代わって支給申請と受取りを行う直接支払制度が利用できます。直接支払制度を活用することで、あらかじめまとまった出産費用を用意することなく出産でき、経済面・手続面の負担を軽減することができます。手続きに関しては、ご自身が加入している健康保険組合などの保険者にご確認ください。
高額療養費制度
切迫流産・切迫早産、妊娠高血圧症候群などの病気により入院した場合や、帝王切開で分娩した場合の医療費が対象になる場合があります。医療機関や薬局に支払う金額が月ごとの限度額を超えた場合、超えた部分が公的医療保険から支給されます。手続きに関しては、ご自身が加入している健康保険組合などの保険者にご確認ください。
産科医療補償制度
産科医療補償制度に加入している分娩機関で出産し、万が一、赤ちゃんが分娩に関連して重度脳性まひとなり、在胎週数、障害の程度などの基準を満たした場合には、看護、介護のための補償金が支払われるとともに、脳性まひ発症の原因分析が行われます。この制度に加入している分娩機関の一覧は、(公財)日本医療機能評価機構のホームページに掲載されています。 なお、補償申請期限はお子様の満5歳の誕生日までです。
助産制度
助産制度とは、経済的な理由で病院や助産所に入院して出産することができない妊婦さんが指定された施設に入所し出産できる制度です。助産制度の手続きに関しては、お住まいの地域の市区役所・町村役場にご相談ください。
社会保険料
産前産後休業中と育児休業中は、健康保険・厚生年金保険の保険料は、事業所から健康保険組合や年金事務所に申出をすることによって、休業を開始した月から終了した月(終了日の翌日の属する月)の前月までの健康保険・厚生年金保険の保険料は、本人負担分、事業主負担分ともに免除されます。社会保険料の免除を受けても、健康保険を活用した受診は通常どおり可能です。厚生年金保険の支払いを免除された期間分についても、休業前の給与水準に応じた厚生年金保険料を納めた期間として扱われます。
また、国民年金第1号被保険者(20歳以上60歳未満の自営業者や農業者、学生、無職の方とその配偶者の方)においても、産前産後期間(出産予定日またはは出産日[出産後に届出をした場合])が属する月の前月から4か月間(多胎妊娠の場合は出産予定日または出産日が属する月の3か月前から6か月間)の保険料を免除し、免除された期間分についても、国民年金保険料を納めた期間として扱われます。詳しくは、年金ダイヤル(0570-05-1165)、年金事務所、加入先の健康保険組合などにご相談ください。
働いている妊産婦が受けられる経済的サポート
産前産後休業の期間中、健康保険から1日につき、原則として賃金の3分の2相当額が支給されます。ただし、休業している間にも会社から給与が支払われ、出産手当金よりも多い額が支給されている場合には、出産手当金は支給されません。詳しくは、加入先の協会けんぽ、健康保険組合などにご相談ください。
被保険者が病気やけがのために働けず給与の支給がない場合に収入を補うための制度です。妊娠は病気ではないため、基本的には傷病手当金の対象にはなりませんが、妊娠中には切迫早産や切迫流産など入院する可能性や、医師に言われて安静にしなくてはならない場合もあります。そのような場合には、傷病手当金の支給対象になります。出産手当金と傷病手当金の給付を同時に受けることはできません。詳しくは、ご加入の協会けんぽ、健康保険組合などにご相談ください。
子の出生日から8週間を経過する日の翌日までの期間内に、4週間(28日)以内の期間を定めて、子を養育するための産後パパ育休(出生時育児休業)を取得した場合など一定の要件を満たした雇用保険被保険者が対象で、原則として休業開始前賃金の67%が支給されます。詳しくは、最寄りのハローワークにご相談ください。
1歳未満の子(保育所に入れないなどの事情があれば最長2歳に達する日まで)を養育するために育児休業を取得した場合など一定の要件を満たした雇用保険被保険者が対象で、原則として休業開始後6か月間は休業開始前賃金の67%、休業開始から6か月経過後は50%が支給されます。詳しくは、最寄りのハローワークにご相談ください。
※いずれも非課税のため所得税の控除はなく、次年度の住民税の算定基礎にもなりません
雇用保険料は、会社から支払われた給与に雇用保険料率を乗じて計算します。産前産後休業中、育児休業中に会社から給与が支払われていなければ、雇用保険料の負担はありません。詳しくは、都道府県労働局へご相談ください。