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妊婦のからだの変化

妊娠中のからだの変化やお腹の赤ちゃんの成長など、妊娠生活において気をつけたいポイントを紹介しています。

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6分でわかる「妊婦のからだの変化編」

妊娠中のからだの変化

妊娠中にからだがどのように変わっていき、おなかの赤ちゃんがどのように育っていくのか、知っておきたい人も多いのではないでしょうか。妊娠初期から後期までの妊婦さんの様子や赤ちゃんの成長、妊娠生活の中で気をつけたいポイントをカレンダーにまとめました。

図:マタニティカレンダー

母健連絡カードの使用方法(イメージ)
※横にスワイプすると表全体を見ることができます。

妊娠中の食事

おなかの赤ちゃんを育んでいく妊婦さんにとって、食事はとても大切です。

妊娠初期の赤ちゃんはまだ小さく、たくさんのエネルギーを必要としていないため、つわりがある時は、体調に合わせて食べられるものを摂取しましょう。つわりが落ち着いてきたら、食事の内容やタイミングを見直しましょう。

心配ごとがあれば、お住まいの地域の保健師・助産師などによる妊婦さんの健康相談の窓口や、病院によって設けられている助産師外来で相談できます。お母さんの健康と赤ちゃんの成長のために健康的な食生活を送りましょう。

妊娠中の食生活の基本

主食・主菜・副菜を組み合わせた栄養バランスの良い食事を、1日2回以上摂ることをお勧めします。長い妊娠期間の中で、時には、朝食を抜いたり、昼食がパンのみとなったり、間食でお菓子を食べ過ぎたり、夕食の時間が遅かったりすることもあるかもしれません。このような食生活が続くと、妊娠中の体重コントロールに影響を及ぼすこともあるため、早めに食事の内容やリズムを見直しましょう。また、塩分の摂りすぎは妊娠高血圧症候群、糖質の摂りすぎは妊娠糖尿病のリスクを高めてしまうため、食品や食事に含まれる栄養素に留意しましょう。

バランスの良い食事について|妊産婦のための 食事バランスガイド

妊娠中に注意したいもの

1
カフェインの摂りすぎに注意しましょう。カフェインは、コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶の他、チョコレートなどにも含まれます。
2
妊娠中は禁酒・禁煙が原則です。早産や赤ちゃんの発育不全などを引き起こさないために、周囲の人にも協力を求めましょう。
3
生野菜をよく洗う、生ものを控えるなど、食中毒予防を心がけましょう。

図:妊娠中に避けた方がよい食べ物

妊娠前・妊娠中に気をつけたいビタミン・ミネラル

不足に気をつけたいビタミン・ミネラルは、葉酸や鉄です。

葉酸

葉酸の不足を予防することで、赤ちゃんの神経管障害の発症リスクを下げることができます。妊娠初期は1日あたり葉酸0.4mgの摂取が推奨されます。葉酸は妊娠のごく初期に重要となるので、妊娠の1ヶ月以上前から葉酸を十分に摂取することが大切です。ブロッコリー、枝豆、のりなどが葉酸を多く含みますが、サプリメントを利用して効率よく摂取することをお勧めします。妊娠期間を通じて、葉酸のサプリメントを摂取しても構いません。

鉄が不足すると、赤血球の中に含まれるヘモグロビンが作りにくくなることで、貧血となります。貧血は動悸、息切れ、めまい、立ちくらみ、頭痛や倦怠感の原因になります。妊娠中は赤ちゃんの成長、胎盤内の鉄貯蔵、循環血液量の増加に伴い、鉄の必要量が増すため、妊娠前よりさらに多くの鉄分を摂取することが大切です。ほうれん草や小松菜などが鉄分を多く含みますが、サプリメントを利用して摂取することもできます。
妊婦健診では妊娠初期、中期、後期に血液検査で貧血の確認をします。貧血の値によっては医療機関から鉄剤が処方されます。

特定のビタミン・ミネラルの摂りすぎに注意

サプリメントなどによる特定のビタミン・ミネラルの過剰摂取には注意が必要です。サプリメントを利用する場合にはその含有成分等をあらかじめ確認し、疑問点があれば医師に確認しましょう。

妊娠中の体重コントロール

妊娠中は、赤ちゃんの成長に加えて、胎盤や羊水、妊婦さんの血液などが増える分、体重は増加していきます。

適切な体重コントロールは、赤ちゃんの健康にとっても大事な点です。体重が増えすぎると、産道周辺の脂肪の影響で出産時に赤ちゃんがスムーズに降りてこられないこともあります。逆に、体重増加が不足すると、早産や低出生体重児のリスクが高まります。

まずは妊婦さん自身の体格(BMI)にあわせた体重増加の目安をチェックしましょう。そして、妊娠中は定期的に、体重を測定・記録し、ゆるやかな体重増加となるように、食生活や運動量を調整してコントロールしていきましょう。体重の増え方には個人差も大きいため神経質になりすぎないことも大切です。

図:BMIと体重増加量の目安

妊娠中の運動

妊婦さん自身の体調や生活、季節、環境に応じて、無理のない範囲でからだを動かすようにしましょう。

つわりが落ち着いた時期から、体調の良い時に1回につき30分~1時間程度の軽い運動をお勧めします。例えば、ゆったりとしたウォーキングや、マタニティビクス、マタニティヨガ、スイミング、お風呂上がりのストレッチなどが挙げられます。

腹筋を使う動作や、激しい動きは避けてください。妊娠前に普段運動をしていなかった方は、1回につき15分程度から始め、徐々に運動量を増やせると良いでしょう。おなかが張りやすい方や、多胎、切迫早産や妊娠高血圧症候群などの合併症がある方は、運動を始める前に、必ず担当医に相談し、指導に従ってください。

便秘と痔

便秘

妊娠中は便秘になりやすく、もともと便秘ではない人も妊娠後に便秘になることはよくあります。妊娠中はプロゲステロンというホルモンが分泌され、腸の動きが抑えられるためです。この状況が出産まで続くこともありますが、出産後は少しずつ便秘が改善されます。

便秘の予防には、水分、食物繊維を多く含んだ食品(根菜など)やヨーグルトを積極的に摂ることと適度な運動が大切です。それでも便秘が改善されない場合は、妊婦健診で相談しましょう。必要に応じて下剤(酸化マグネシウムなど)が処方されます。

妊娠や出産をきっかけに痔になることは少なくありません。便秘で便が硬くなり、排便時に息むことが多くなると、肛門周囲の血管がうっ血し、痔になります。外痔核や切れ痔は痛みや腫れを伴います。

痔の予防には、まず便秘を防ぐことが大切です。規則正しい生活や食事を心がけ、場合によっては下剤を使用して対処しましょう。痔の痛みや腫れが強い場合は妊婦健診で相談しましょう。必要に応じて痔の薬(軟膏)が処方されます。出産後、痔は徐々に軽快します。

頻尿と尿もれ

妊娠中は大きくなった子宮による膀胱の圧迫と、循環血液量の増加による尿量の増加の影響で、頻尿や尿もれになることがあります。妊娠中は夜間にトイレで目が覚めやすくなりますが、出産後は改善されます。

妊娠中の尿もれは珍しいことではなく、治療を要することはほとんどありません。注意が必要なことは、尿もれと破水の区別がつきにくいことです。尿もれと思っていたものが、数日後の診察で破水と判明することがあります。流れている感じが続くなど、気になる場合は医療機関に相談しましょう。

歯科健診と口腔ケア

つわりの時は、歯磨きが十分にできないことがあります。また、妊娠によって、唾液の分泌量や性状が変わり、口の中の環境が悪くなりがちです。悪い口内環境が続くと、歯周病や虫歯になるリスクが高まります。歯周病の妊婦さんは、早産や低出生体重児のリスクが高くなるという報告もありますので、赤ちゃんのためにも口腔ケアが大切です。

口腔ケアには、歯磨きなどのご自身でおこなうセルフケアと、口腔衛生指導・歯面清掃・歯石除去などの歯科医師、歯科衛生士による専門ケアがあります。市区町村によっては、妊娠中の歯科健診に補助が出る場合があります。

妊娠を理由に歯科受診や治療を控える必要はありません。レントゲン撮影、局所麻酔、内服薬が必要になる場合もありますので、妊娠中に歯科受診をする場合は、必ず妊娠していることを歯科医師に伝えましょう。

生まれたばかりの赤ちゃんの口の中は無菌ですが、両親の口の中の細菌が伝わることがあります。このため、家族の適切な口腔ケアは子供の虫歯を予防できる可能性があります。このことから、出産後も口腔ケアを続けることをお勧めします。

妊娠中の肌の変化・ケア

妊娠線

妊娠に伴い、おなか、太もも、お尻、乳房に赤色〜紫色の線が出てくることがあります。これを妊娠線と言います。妊娠線は皮膚が急激に伸び、皮下の真皮が裂けることで起こります。妊娠中は肌の保湿を心がけましょう。出産後は色が薄くなり、少しずつ目立たなくなります。

妊娠性痒疹(にんしんせいようしん)

妊娠中はホルモンバランスの変化により、おなかや背中、手足に湿疹ができ、かゆみを伴うことがあります。これを妊娠性痒疹と言います。保湿を十分におこない、かゆみが強い場合は冷やしましょう。症状が強い場合は外用薬や飲み薬が処方されます。妊娠以外の他の原因で湿疹になっている場合もありますので、気になる場合や症状が続く場合は皮膚科や妊婦健診で相談しましょう。

おっぱいのケア

妊娠後期は、出産後の授乳に備えて、自身の乳房や乳頭の状態を知る大事なタイミングとなります。出産前にしっかり観察して、ケアをしていきましょう。

乳頭の形状にあわせたケア

乳頭が柔らかいと赤ちゃんが母乳を飲みやすいため、出産前から乳頭や乳輪をほぐしておくことをお勧めします。乳頭が陥没している場合には、乳頭を突出させるマッサージ方法もあります。乳頭への刺激は、おなかの張りを引き起こすことがあるため、自身に合った時期や方法については医療機関に相談し、指導を受けてからおこなってください。

乳頭のお手入れ

乳頭に垢がたまることもありますが、指の爪などでかき出すなどの強い刺激は避けてください。気になる場合は、入浴前に、オイル(オリーブオイルやベビーオイル)を付けたコットンを乳頭に置きラップをして、入浴中に5分程度温めてから外すと、汚れが取れやすくなります。

下着の工夫

妊娠時は、個人差もありますが、乳腺の発達により、妊娠前よりも乳房が大きくなります。からだの変化に合わせて、からだを締め付け過ぎないものを着用しましょう。

妊娠中と産後のこころの変化

マタニティブルーズ

産後に気持ちが一時的に不安定になることをマタニティブルーズと言います。ホルモンバランスの変化によって、涙もろくなったり、イライラしたり、気分が落ち込むなどの症状がでます。多くは一時的なもので、10日程度で症状が落ち着きます。できれば、このような時期があることを前もって家族に伝え、温かく受け入れてもらいましょう。マタニティブルーズが長引く場合は「産後うつ」に移行することがありますので、注意が必要です。症状が強い場合や長引く場合は、医師や助産師に相談しましょう。

このような心の不調は妊娠中からみられる人もいます。妊娠中はからだだけではなく、心にも気を配り、体調不良が続く場合は医療機関に相談しましょう。

産後うつ

マタニティブルーズは10日程度で落ち着きますが、産後うつ病の症状は2週間以上持続します。気分の落ち込み、楽しみの喪失、食欲不振や不眠などの症状が現れます。産後のホルモンバランスの急激な変化や育児ストレス、頻回の授乳による睡眠不足が重なると一気に悪化します。「自分は大丈夫」と思い込まず、お住まいの地域の子育て世代包括支援センターや医療機関に相談しましょう。

対処方法としては、産後ケア施設や家事・育児サービスを利用すること、十分な休養と栄養をとること、周りの人に話を聞いてもらうことがあげられます。時には、精神科・心療内科の受診が必要となります。家族、医療スタッフ、地域の保健師などとの連携も大切です。