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妊娠中の管理

出生前検査で赤ちゃんに染色体の病気などがあることがわかると、妊娠の継続を決めてからも、出産までどのような生活を送るとよいのか、心配もあると思います。出産までの医療機関との関わりや妊娠中の心がけなどについて知っておきましょう。

妊娠中の日常生活

日常生活で気をつけることは、基本的には、一般的な妊娠と変わりません。

▶▶「妊娠中に気をつけたい症状と病気」を見る

ただし、赤ちゃんの病気による症状が赤ちゃんにも妊婦さんにもあらわれることがあります。赤ちゃんの状態によっては、妊婦健診の間隔を短くしてこまめに経過をみたり、検査や治療のために入院が必要になったりすることもあります。妊婦健診をしっかり受け、医師の指導に従いましょう。

医療機関の選び方

赤ちゃんや妊婦さんに起こりうる問題を的確に察知・判断し、妊娠中から出産後まで継続的なケアやサポートを得られる医療機関で診てもらうことが望ましいでしょう。染色体の病気などがある赤ちゃんの出産には、新生児を専門に診る「新生児科」がある医療機関が適しています。赤ちゃんの病気の種類や状況によっては新生児科だけではなく、それぞれ専門の異なる複数の科による検査や治療が必要となることも少なくありません。どの医療機関がよいかは医師とよく相談しましょう。

医療機関での出産前・出産後の準備

医療機関では、病気がわかっている赤ちゃんの出産や出産後に向けて、さまざまな職種による準備や支援が行われます。産科では新生児科と連携して出産時期・方法が検討され、出産に向けた準備が進められます。必要に応じて、新生児科医や小児科医から、赤ちゃんの病気や、想定される検査や治療などについて説明があります。赤ちゃんがNICU(新生児集中治療室)に入る可能性がある方に対して、前もってNICUの見学ができるようにしている医療機関もあります。認定遺伝カウンセラー®やソーシャルワーカー、臨床心理士、遺伝看護専門看護師などが、心理面や福祉面の支援を行う場合もあります。

これらの支援の対象には、赤ちゃんとお母さんだけでなく、お父さんなどご家族も含まれています。妊婦健診はお母さん一人で受けに行くことが多いかもしれませんが、育児は夫婦や家族で行っていくものですから、赤ちゃんの病気や治療の説明には、お父さんも同席する機会があることを想定しておきましょう。

出生前検査で赤ちゃんの病気を早期に知ることの最大のメリットは、適切な医学的な管理につなげることと、心理的な準備や社会的な準備ができることです。さまざまな職種から指導やアドバイスを受けて、赤ちゃんや個々の環境に合わせた準備をしていきましょう。


認定遺伝カウンセラー®

病気や遺伝に関する正しい知識を伝え、当事者のさまざまな相談に応じ、意思決定や心理社会的側面の支援を行う専門職です。日本人類遺伝学会と日本遺伝カウンセリング学会から認定されています。

ソーシャルワーカー

福祉に関する知識を持つ専門職で、相談者の話を聞き、必要な機関などと連絡を取って社会的支援を行います。

臨床心理士

心理面の支援を行う専門職で、日本臨床心理士資格認定協会から認定されています。

遺伝看護専門看護師

遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定やQOL向上を目指した生涯にわたる療養生活支援を行う看護師です。日本看護協会から認定されています。

きょうだい(上のお子さん)への伝え方

赤ちゃんに病気があることをきょうだいに伝えるのは難しいものです。年齢によっても受け取り方が異なるので、正解はひとつではありません。お母さんやお父さんが病気のことを受け止められていないときには、きょうだいに伝える前に、ゆっくり時間をかけて気持ちに向き合っていきましょう。

赤ちゃんに病気があることで何が起きる可能性があるか、病院に行く機会が増えることなどを話し、お母さんやお父さんが思っていることを正直に伝えることが大切です。年齢によっては、親が一方的に話すのではなく、病気について一緒に学んで、赤ちゃんにしてあげたいことを話し合うようにすると、育児のときに大きな支えとなってくれるかもしれません。赤ちゃんに病気があるからといって「お兄ちゃん/お姉ちゃんだから我慢してね」と我慢を強いるのは避けましょう。

赤ちゃんが亡くなってしまったときなど、お母さんやお父さんは悲しい思いをすることもあるかもしれません。子どもは、状況は理解できなくても、親が悲しんでいることはわかります。その理由がわからないと、疎外感を抱いたり、自分のせいで悲しんでいるのではないかと感じたりする場合があるので、子どもの理解に合わせてお話をする時間をもってあげることが大切です。

妊娠中大切にしたいこと

赤ちゃんに病気があることがわかっても、その症状や程度はさまざまです。赤ちゃんにどのような症状があらわれるのか、どのように育っていくのかは出産後でもわからないこともあるため、妊娠中は不安や期待で心が揺れるのも当然です。一人で抱え込まず、かかりつけの医師や医療スタッフに相談しましょう。気持ちを整理することで、妊娠中、楽しく過ごしている方、有意義な時間を過ごしている方はたくさんいます。

赤ちゃんがお腹のなかで、あるいは生まれてすぐに亡くなってしまう可能性について告げられることもあるかもしれません。お別れが避けられないとしても、赤ちゃんにどんなことをしてあげたいか、言ってあげたいかを考えてみましょう。お別れの前に手形や足型を取るなど思い出を残すサポートをしてくれる医療機関もあります。赤ちゃんと一緒にいられる時間を大切にして、今、赤ちゃんに対してできることをしていきましょう。